🐾 はじめに 〜今夜は、笑える話です〜
うそこ動物園が寝しずまった、まよなかのこと。
今夜もこっそりオリを抜け出した3匹が、うそこ大学の門をくぐります。行き先はもちろん「脳内メーカー化学部」。人間という、ふしぎな生きものの「頭の中」を教えてもらえる、ひみつの教室です。
プレソコ
教授
プレソコ
クロソコ
教授
レサソコ
📖 これって、どんなお話?
前回の『羅生門』は、平安時代の京都でした。今回はぐっと近づいて、明治時代のお話です。
東京生まれのまっすぐな青年が、四国の田舎町の中学校に、数学の先生としてやってきます。ところが待っていたのは、いたずらばかりの生徒たちと、クセの強すぎる先生たち。腹を立てては突っ走り、損ばかりしながら、それでも曲がったことだけは絶対に許せない——そんな男の、痛快な奮闘記です。
語り口は主人公の一人称。ポンポン跳ねるような江戸っ子口調で、明治の小説なのに驚くほど読みやすい。声に出して読みたくなるテンポの良さが、この作品の魅力のひとつです。
登場するのは、こんな人たち。
クロソコ
教授
レサソコ
教授
🧠 第1幕 〜坊っちゃんという男、清というひと〜
物語は、主人公の生い立ちから始まります。
坊っちゃんは、とにかく無鉄砲。二階から飛び降りて腰を抜かしたり、ナイフで自分の指を切ってみせたり。おかげで親からは「こいつはどうせろくな者にならない」と見放され、兄からも嫌われて育ちました。
そんな彼の頭の中は、こうです。
┌─────────────────────┐ │ 大 損気 無 │ │ ┏━━━━━┓ │ │ 暴 ┃ 損 ┃ 痛 │ │ ┗━━━━━┛ │ │ 跳 清(小) │ └─────────────────────┘
プレソコ
教授
クロソコ
レサソコ
教授
✍️ ここ、実際の漱石の文章です
『坊っちゃん』は、この一文から始まります。
たったこれだけで、主人公がどんな男か全部わかってしまう。名文というのは、こういうものを言うのでしょうね。
クロソコ
教授
そして、清
家族の誰からも期待されなかった坊っちゃんを、ただ一人かわいがってくれた人がいました。実家に長く仕えていた老女中の、清です。
清は、坊っちゃんが何をしでかしても叱りません。それどころか「あなたはまっすぐで良いご気性だ」「将来きっと立派になる」と、本気で信じていました。誰も見ていないところで菓子を買ってきてくれたり、こっそりお金を握らせてくれたり。
その清の頭の中が、これです。
┌─────────────────────┐ │ 坊っちゃん 坊っちゃん 坊っちゃん │ │ ┏━━━━━┓ │ │ 坊っちゃん ┃坊っちゃん┃ 坊っちゃん │ │ ┗━━━━━┛ │ │ 坊っちゃん 坊っちゃん 坊っちゃん │ └─────────────────────┘
プレソコ
クロソコ
レサソコ
教授
プレソコ
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クロソコ
やがて親も兄も家を出て、坊っちゃんは学校を卒業し、四国の中学校へ数学教師として赴任することになります。清とは、いったんお別れ。
これが、物語の出発点です。
🧠 第2幕 〜赤シャツの、ふたつの脳内〜
赴任先の中学校には、クセの強い先生たちが揃っていました。中でも要注意なのが、教頭の赤シャツです。
赤シャツは、いつも上品な言葉づかいで、文学や教養の話をします。生徒思いの立派な教育者——少なくとも、表向きは。
┌─────────────────────┐ │ 品 文学 高 │ │ ┏━━━━━┓ │ │ 徳 ┃ 教養 ┃ 愛 │ │ ┗━━━━━┛ │ │ 雅 生徒(多) │ └─────────────────────┘
プレソコ
レサソコ
クロソコ
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ところが。この赤シャツ、裏では大変なことをやっていました。
気の弱い英語教師・うらなりには、婚約者がいました。その婚約者を、赤シャツが横から奪おうとしていたのです。しかも邪魔なうらなりを、遠くの町へ左遷させようと画策までする。そのうえ、自分に都合の悪い山嵐を悪者に仕立て上げ、坊っちゃんに吹き込んで仲違いさせようとまでします。
同じ人物の、腹の中がこちらです。
┌─────────────────────┐ │ 算 出世 体 │ │ ┏━━━━━┓ │ │ 欲 ┃ 保身 ┃ 偽 │ │ ┗━━━━━┛ │ │ 謀 陥れる │ └─────────────────────┘
プレソコ
クロソコ
プレソコ
レサソコ
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前回の下人は、心が「迷」から「盗」へと塗りかわっていきました。赤シャツは違います。塗りかわりません。最初から2枚を使い分けている。どちらがより怖いかは、読む人によって意見が分かれるところです。
🧠 第3幕 〜山嵐と、一銭五厘〜
坊っちゃんには、もう一人気になる同僚がいました。数学主任の山嵐です。
いがぐり頭のごつい男で、態度も声も大きい。最初、坊っちゃんは彼のことを「乱暴な奴だ」と思っていました。しかも赤シャツに「山嵐には気をつけたほうがいい」と吹き込まれ、すっかり疑ってしまいます。
ここで問題になったのが、一銭五厘でした。
赴任してすぐの頃、山嵐は坊っちゃんに氷水をおごってやったことがありました。その代金が、一銭五厘。今でいえば数百円ほどの、ささやかな金額です。
ところが山嵐を疑い始めた坊っちゃんは、こう考えます。「嫌いな奴に恩を受けたままではいられない」。そして一銭五厘を、山嵐の机の上にドンと置いたのです。
山嵐は、受け取りませんでした。その金は、机の上に置かれたまま——。
┌─────────────────────┐ │ 骨 気概 剛 │ │ ┏━━━━━┓ │ │ 怒 ┃ 意地 ┃ 正 │ │ ┗━━━━━┛ │ │ 直 一銭五厘(小) │ └─────────────────────┘
レサソコ
教授
プレソコ
クロソコ
レサソコ
教授
やがて坊っちゃんは、赤シャツの正体に気づきます。山嵐が悪者にされていたのは、赤シャツの工作だった。誤解が解けた二人は、手を組みます。
そして、二人は張り込みを決行。赤シャツと野だいこの悪事の現場をついに押さえ、正面から殴りつけました。あとくされなく辞表を叩きつけ、坊っちゃんは東京へ帰ります。
プレソコ
レサソコ
教授
クロソコ
🧠 第4幕 〜そして、清〜
東京へ戻った坊っちゃんは、小さな職を見つけ、清と一緒に暮らし始めます。四国での騒動を経て、ようやく手に入れた穏やかな日々。
ところが清は、まもなく病気にかかり、あっけなく亡くなってしまいます。
死ぬ前の日、清は坊っちゃんにこう言い残しました。「自分が死んだら、坊っちゃんのお寺へ埋めてください。お墓の中で、坊っちゃんが来るのを楽しみに待っております」。
物語の最後、坊っちゃんの頭の中は、こうなっています。
┌─────────────────────┐ │ 愛 慕情 絆 │ │ ┏━━━━━┓ │ │ 恩 ┃ 清 ┃ 涙 │ │ ┗━━━━━┛ │ │ 損(小) 無鉄砲(小)│ └─────────────────────┘
プレソコ
クロソコ
レサソコ
教授
クロソコ
教授
✍️ ここ、実際の漱石の文章です
あれだけ賑やかで愉快だった物語が、最後の数行で急に静かになります。
これが、『坊っちゃん』のいちばん最後の一文です。
大立ち回りも、天誅も、江戸っ子の啖呵も、全部終わったあとに残ったのは、たったこれだけ。清は、坊っちゃんの家の墓に入りました。ずっと家族に疎まれてきたあの子が、家族ではなかったこの人と、同じ墓に眠っている。
プレソコ
クロソコ
レサソコ
教授
痛快なコメディだと思って読み進めた先に、この一文が待っている。この落差こそが、『坊っちゃん』が100年以上読み継がれている理由なのかもしれません。
……あらすじで読むより、ちょっと解像度、上がりませんでしたか?
📚 原文も読んでみる?
『坊っちゃん』は、長編といっても文庫本で200ページほど。しかもテンポが抜群に良いので、明治の小説とは思えないくらいスラスラ読めます。「ちょっと本物も読んでみようかな」と思ったら、ぜひ。青空文庫で全文が無料で読めます。
プレソコ
クロソコ
レサソコ
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📱 もっと脳内メーカーで遊ぶ
気になった名前や言葉を、あなたの手で脳内メーカーにかけることができます。公式アプリなら、いつでもどこでも「頭の中」をのぞけます。
本記事で引用した『坊っちゃん』本文は、夏目漱石(1916年没)の著作で、著作権保護期間が満了したパブリックドメイン作品です。原文テキストは青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)に収録されているものを参照しています。